犬の下痢や軟便、どう対処する?獣医師が徹底解説!
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わんちゃんの下痢や軟便など、便に関するトラブルは動物病院でも多い病気の一つです。この記事ではわんちゃんの下痢や軟便を起こす病気やその対処法について獣医師が説明します。
犬の下痢や軟便の症状とは
便の正常な硬さの目安は、ティッシュで掴むことができ、ティッシュに少し便が付着するくらいです。
便の出始めから途中までは正常の硬さで、最後のほうでソフトクリームくらいのものが出るときは、まだ消化が進んでいないものが一部出てしまった状態ですが、正常の便の範囲と考えられます。
しかし、最初からソフトクリーム状もしくはそれ以上の水分を含んだ便が出てくるのは軟便や下痢の状態と言えます。
犬の下痢や軟便、考えられる原因は?
わんちゃんの下痢や軟便の原因となる病気は多岐にわたりますが、そのいくつかをご紹介していきます。
胃腸炎
食事内容を変更したばかりのときや寒暖差の大きな季節などは腸内の細菌叢バランスが崩れやすくなり、下痢や軟便を起こすことがあります。
寄生虫感染
回虫や条虫、原虫など様々な寄生虫によって下痢や軟便が引き起こされます。
ウイルス感染症
パルボウイルスでは大量の血が混じる下痢を起こします。子犬で多く致死率も高い感染症ですが、現在ではワクチンが普及し発症することは少なくなってきました。
また、犬コロナウイルスによる下痢もありますが、これはいわゆるCOVID-19(新型コロナウイルス)とは異なるもので犬に軽度の下痢を起こします。
炎症性腸疾患(IBD)
体の免疫を担当する細胞が自分の細胞を攻撃してしまうことで起こるものです。食事内容の変更やその他の細菌・寄生虫など感染性の病気の治療を行っても改善しない場合は、ステロイド剤など免疫抑制剤を使って治療していきます。
食事反応性腸症
明確な原因はわかっていませんが、食事を変更することで改善するものです。
抗生物質反応性腸症
細菌をやっつける抗生剤の投与によって腸内の細菌叢バランスが崩れることで発症します。抗生剤の使用をやめると改善します。
膵外分泌不全
消化液のひとつである膵液を膵臓でうまく作れなくなることで発症します。脂肪が分解されないため、白色や灰色がかった便が出ます。
下痢や軟便のこともありますが、硬い便が出ることもあります。食欲はある一方で、痩せ型であることも特徴です。
どのタイミングで動物病院を受診すればいい?
下痢や軟便が一度だけでなく継続しているときは早めに受診することをおすすめします。特に子犬は脱水もしやすいので、様子を見ずにすぐにでも受診することが重要です。
原因を明らかにするための検査に必要な便は、受診した際に直接わんちゃんのお尻から採ってくれることも多いのですが、寄生虫の検査やPCR検査を行う際はまとまった量の便が必要になることがあります。
下痢や軟便のときはお尻に採便棒を入れてもなかなか多くの便を取れないことも多いため、もしまとまった量の便があった場合はビニール袋などに入れて受診のときに持っていくと診断の役に立つかもしれません。
下痢や軟便になった場合の対策・対処法
下痢や軟便はとても多い症状ですが、原因にあった治療を行うことが大切です。
腸管の粘膜を休ませる目的で絶食させることもありますが、子犬では低血糖になる恐れもあります。受診して獣医師の指示のもと行うようにしましょう。下痢の原因に対する治療とともに、食事をあげる量や食事の内容などもしっかり相談するようにしてください。
また、下痢をしてしまった際に、お尻の周りの被毛や皮膚が汚れてしまうことがあります。清潔にすることは必要ですが、強くこすることで皮膚炎などを起こしてしまわないよう気を付けて洗浄やふき取りをするようにしましょう。
その他、雷や騒音、来客、急な冷えなどの環境のストレスによって下痢を繰り返して起こしてしまうことが分かっている場合には、そのような状況をつくらないよう予防することも大切です。
整腸作用を期待して日頃からわんちゃん用の整腸剤を与える場合もあります。また、人とわんちゃんの腸内細菌叢を構成する菌は異なるので一概に効果があるとは言えませんが、著者は朝食の無糖のヨーグルトを少量分け与えています。
まとめ
わんちゃんの下痢や軟便は多く見られるものですが、その原因は多岐にわたります。
下痢や軟便という症状だけでは原因を特定することは難しく、原因により治療法も異なるため、早く受診することが重要になります。