便は病気のサインとなることも。血便、軟便、異臭、気になる飼い猫の便の悩みを紹介
出典:PIXTA
動物病院ナビ&獣医師相談では会員様より毎日獣医師への相談を受け付けています。直近で寄せられた相談をピックアップしてご紹介します。今回は飼い猫の便の悩みについて3つ取り上げて紹介します。
猫は体調が悪いときにも態度に出しにくい生き物でもあります。便は病気のサインになることもあるので、日常的にチェックし猫ちゃんの異変にいち早く気づいてあげることが重要となってきます。
目次
相談1:便に血がついていることがあり、病院でトリコモナスと診断された
相談者
6ヶ月ぐらいの時 便に血がついていることがあり、病院でトリコモナスと診断され治療しました。
その後 2回程 便に粘液性の血が混じっている物が出て再度 薬を飲み しばらく落ち着いてたのですが その後3回ほど血が付いている便がありました。しかし、翌日には普通の便に戻っているので病院に行くべきか悩んでいます。
獣医師
こんにちは、何度も血便がでるとのことでご心配ですよね。トリコモナス症は子猫ちゃんによく見られる寄生虫で、おっしゃるように不定期に軟便や血便を引き起こします。
完全に駆虫できればよいのですが、完全には除去できず不顕性感染といって、症状はでないけどお腹の中に虫が存在するという状態になることもあります。症状が出るのは多くが子猫ちゃんで、成猫になると自然と症状が良くなったり、自然治癒することもあります。
まだ1歳とのことなので、もしかすると今後自然によくなったり、症状がでなくなることも考えられますが、繰り返すようであれば再度病院で検査をする方が良いかと思います。他にも血便の原因となるものがあるかもしれません。
相談2:便の匂いについて 雄猫と雌猫で便の匂いが違う
相談者
便の匂いについて質問です
きょうだい猫2匹で飼っているのですが、雄猫と雌猫で便の匂いが違います。
オスの方はお腹が緩くなることもあるのですが、通常の便の匂いもメスよりも強いです。
匂いは気にしなくて良いものなのでしょうか?それとも、病院に行く際に相談したほうが良いのでしょうか?その際はどのような事項を伝えるべきでしょうか?
獣医師
こんにちは。便のニオイについてのご相談ですね。ニオイが“違う”事だけについては、仮にきょうだいで、更に食べ物が同じでも、異なることは考えられます。
ただ、男の子さんは、お腹が緩くなることがある…とのことなので、この点に関してはかかりつけの先生にご相談になられることをお勧め致します。その際、便を病院にお持ちになった方が良いこともありますので、受診前に先生にご質問されておいた方が良いでしょう。
若齢の猫さんは、便の固さが安定するまでに時間がかかる事もありますので、食事管理を含め、先生とお話しになると良いでしょう。
相談者
ありがとうございます。ちなみに匂いが異なる理由はどんなものが考えられるのでしょうか?また、疾患だった場合、どのような疾患が考えられますか?
獣医師
オス猫の方が便のニオイが強くなるのは男性ホルモンの影響が考えられます。一般にオス猫は縄張りを示すために便のニオイもメス猫よりも臭い傾向にあります。
去勢手術がまだでたしたら、去勢手術によって改善するかもしれません。また、腸内細菌バランスによっても便のニオイは変化します。この場合もサプリなどで改善できる場合がありますので、一度動物病院にご相談ください。
便のニオイだけで病気を判断するのは難しいですが、ニオイだけでなく色も黒っぽくなっている、とか下痢をしている、ということであれば、消化管に炎症や出血が起こっていること、寄生虫がいることなどが考えられます。気になられるようでしたら、一度かかりつけの先生にご連絡の上、便の検査をしてみることをおすすめいたします。
相談3:2週間に3回ほど軟便をすることがあります。病院に行ったほうが良いでしょうか。
相談者
病院に行くほどの軟便でしょうか?
2週間に3回ほど軟便をすることがあります。病院に行ったほうが良いでしょうか。(前回健康診断で伺った時に、口頭で軽く相談したときは「様子を見てください」と言われました。)
またその際はどのような情報が必要でしょうか?
食欲はあり嘔吐はしていません、尿は1日3-4回しており走っているので元気があるように見えます
睡眠もよくとっているようです
空調は26度除湿にすることが多いです。
室内気温は24-27度、湿度40-65度の間です。
獣医師
ご相談ありがとうございます。 とてもご心配されていることと思います。
頻度としても2週間に3回とそこそこ多く、若齢であることから、動物病院で検査をしていただいたほうが良いのではないかと考えます。
子猫ちゃんの場合、感染、異食や食事性、ストレスなどが主な下痢の原因となります。
このうち異食(おもちゃや観葉植物など、食事出ないものを誤って飲み込んでしまうこと)は時に命にかかわることがあるため、緊急的な処置が必要になります。
異食の場合、食べてしまったものによっては、食べた直後は症状がみられなくても、日を開けて急激に症状が進むことがあるため、思い当たる節がある場合、動物病院を受診されることをお勧めします。
この際、便と一緒に食べてしまったものの情報(食べたおもちゃの類似品や写真、観葉植物の名前など)もあると治療の一助となります。
食事性(食事自体が体に合っていない場合)やストレスの場合、元気食欲があるうちは大きな事態につながることが少なく、時間経過で治ることもあるため、異食に比べ緊急性は低いです。
ただし、下痢の場合、消化吸収がうまくいっておらず、食欲があるのに体重が減ってしまっている場合があります。 こまめに体重測定をしていただき、減少傾向があるのであれば、やはり動物病院への受診をお勧めいたします。 この際は、今までの飼育歴(ご質問欄にご記入いただいたような情報)と一緒に便(できるだけ新鮮なもの)があると検査の一助となります(動物病院で直接採取もできますので、必ずしも持参する必要はありません)。
また、普段は良便(子猫の場合、黄色に近い茶色~こげ茶で形があり、硬さは指で押しても跡がつかない程度)であるのに対し、間欠的に下痢が認められる場合、食事性やストレスによる下痢の可能性が強く疑われます。 普段から軟便や下痢が続いているのではなく、たまに認められる場合では、様子を見つつ、ご自宅で下痢につながるストレスや食事を探ってみるのも手かもしれません。
ただし、良便のように見えて実は軟便(若干形はあるものの崩れているものや形はあるが指で押すとソフトクリームのように柔らかいもの など)という可能性もあるため、判断が難しい場合もあるかもしれません。 最後に感染ですが、これは感染するウイルス、寄生虫、細菌によって緊急性が異なります。 現在元気食欲がある状態とのことなので、命にかかわるような危険な感染症を患っている可能性は低いと思われますが、症状から感染症を否定することは困難です。
ネコで多いジアルジアやトリコモナス感染症(母ネコや周囲環境から感染)は、酷い下痢を呈する子もいれば、何の症状も見られない場合もあります。 ネコの感染症の中には『人獣共通感染症』という、ネコにも人にも感染する病気が存在するため、ご家庭に幼い子やご老人のような比較的免疫力の弱い方がいらっしゃる場合、ネコから人へ感染を起こしてしまう可能性も懸念されます(もちろん成人にも感染する可能性はあります)。
このため、感染症が疑われる場合、ネコちゃん自身の健康はもちろんのこと、人間側の健康を守るためにも、動物病院で検査を行っていただいたほうが良いかもしれません。
便の異変一つとっても様々な可能性が考えられ一概に何が原因とは言えないことも多いことがわかります。大切なのはしっかりと観察し動物病院に行った際に的確な情報を主治医に伝えしっかりと検査をすることです。
夏を迎え、食中毒や部屋の冷えすぎによる体調不良なども起こりやすくなるため、普段からトイレの手入れの際に便の状況を観察していきたいものです。