犬の動脈管開依存症の症状

カテゴリー:犬の動脈管開依存症
更新日 2020年02月28日

犬の動脈管開依存症の症状

動脈管開依存症の症状は、通常であれば、胎児期に使用されて生後まもなく閉じるはずの胸部大動脈と肺動脈を繋ぐ動脈管が開いたままの状態になります。動脈管が開いたまま残ってしまうのは、先天的な異常によるものと考えられており、大動脈から肺動脈へ、血圧の高いところから低いところへと血液が逆流する為、心臓への悪影響を及ぼすこともあります。

発病しても軽度であれば発育も正常で無症状であることも多い疾患ですが、動脈管を通じて左心側から右心側に一部血液が流れ込み、肺を経た結果左心へ入り込む血液が多くなった時は場合には呼吸が速くなったり、咳をしたりといった症状がみられます。これを左心不全症状と言いますが、重度になると動脈管を通じ右心から左心へ血液が流れる量が増え、後ろ足に力が入らなくなったり失神したりといった症状が表れるようになります。また、舌や口の中の粘膜の色は正常だけれども膣や包皮などの後半身の粘膜が青紫色になるという特徴的なチアノーゼを呈することもあります(分離性チアノーゼ)。

犬の動脈管開依存症の原因

動脈管開依存症とは、大動脈と肺動脈を結ぶ動脈管という血管が生まれた後も閉鎖せずに開存しているために起こる疾患です。犬の先天性疾患のうち最も発生頻度が高く、25~30%の割合を占めています。猫においても先天性心疾患の7~11%を占め、比較的頻度が高い疾患といえます。

この動脈管が開いたままの状態では、右心室から肺動脈へ流れた血液と圧の高い大動脈から動脈管を経て圧の低い肺動脈へ流れた血液が肺内で一緒になって左心房に流れるため、左心系に流れる血液量が増加し、左心不全が発現します。

この疾患は犬で遺伝性であることが知られており、好発犬種としてプードル(トイ、ミニチュア)、ジャーマン・シェパード、コリー、ポメラニアン、シェットランド・シープドッグ、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。また、雌の方が発症確率が高く、雄:雌比は3:1~2:1です。

症状の程度によっては、咳、努力性呼吸、運動不耐性、虚脱が起こります。右一左短絡性動脈管開依存症では、発作や失神が起こることもあります。

診断の方法として、血液検査、鑑別診断、画像診断があり、X線検査や心臓超音波検査、心電図検査が行われます。

犬の動脈管開依存症の予防/治療法

動脈管開依存症は先天性の心臓疾患といわれており、犬や猫いずれでも発症することがあるのですが、先天性であることから予防をすることはほぼ不可能となっています。発症しやすい種類はあるのでそれらを飼わないでおくということがある意味予防ではあるのですが、基本的には予防すると言うよりも治療を中心とした考えを持つことが大切です。

症状を出さない症例では、ワクチン接種時の聴診時などに指摘されることが多いようです。診断法としては聴診時の雑音、心電図検査、レントゲン検査、心超音波検査があります。動脈管開存症は心室中隔欠損のように自然に閉鎖することはまれな疾患です。治療せずに放置すると生後1年以内に約半数が死亡すると報告されており、診断後は出来るだけ早く手術を実施することが望ましいとされています。ただし、血液の流入が左心系から右心系(左右短絡)の時は手術可能ですが、進行し肺高血圧症を併発したり、血液の流入が右心系から左心系に逆転(右左短絡)になってしまっている場合は手術を行うことが出来ません。この場合は対症療法が中心となりますが、予後はよくありません。

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