人間の食事をペットに与えるのは問題ない?考えられる懸念
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食べることは人間にとってもペットにとっても大きな楽しみのひとつです。美味しそうに食べているペットは可愛らしく、喜ぶ姿を見ると人間のご飯をおすそ分けしたくなりますよね。
今回は人間の食べ物がペットの体に及ぼす影響についてご紹介します。
食卓を見つめるまなざし。「おすそ分け」はOK?
著者(獣医師)個人としては、基本的には人間の食事をペットに与えることはおすすめしていません。人間が食べるために調理したものは他の動物には味が濃くなっている場合がほとんどです。
心疾患のあるわんちゃんに塩やしょうゆを含む食事を与えてしまうと、肺水腫を起こす可能性があります。実際に、焼き鳥などをお裾分け程度に少量与えられ、呼吸が苦しくなったという心疾患の子を診察したことがあります。
お湯で茹でただけのもの以外の調理品は基本的には全て塩分が入っていると考え、与えるのは避けた方が良いでしょう。加熱していないものは細菌による食中毒の可能性があるのでおすすめできません。
物欲しそうな顔をしている時は、フードやペット用トリーツを与えることをおすすめします。
人間の食べ物をあげる際に注意したいこと
人間にとっては美味しく健康に問題がないものでも、ペットが食べると中毒を起こしてしまうものがあります。中毒を起こすものとして有名なものをお示しします。
ネギ類全般
加熱したものでも中毒を起こします。出来上がった肉じゃがに入ったたまねぎやすき焼きの汁で中毒を起こした例もあります。
チョコレート
チョコレートの種類によって中毒の原因になるカフェインやテオブロミンの量は変わります。中毒量を計算する際に役に立つことがあるので、食べたと思われるチョコの包装紙や箱があれば病院に持っていくとよいでしょう。
甘いために大量に食べてしまいがちなので、わんちゃんの体が届かない場所で保管するようにしてください。
レーズン
ぶどう類は腎臓にダメージを与えます。レーズンパンも要注意です。
鳥の骨
鳥の骨自体に毒性はありませんが、加熱後の骨は折れた部分が鋭利になりやすく、丸呑みにしてしまった場合食道や胃粘膜を傷つけたり、詰まって腸閉塞を起こす可能性もあります。
食事の中心はペットフード!その重要性
人間は毎日自分で食べるものを選びます。1日3食のうち1食が栄養バランスが悪い食事だったとしても、次の食事でバランスの良い内容にすれば偏りを元に戻すことができます。
犬や猫などの場合は、基本的には与えられたものを食べ続けることになります。その食事が犬や猫にとって必要な栄養を満たしていないと、栄養不足状態が継続し、様々な弊害がでてきてしまいます。栄養の過不足がないペットのごはんを毎日手作りで与えることはとても難しいことなのです。
そのため、手作りごはんを続ける場合には、かかりつけ獣医師に相談しながらなど、専門的な知識や情報を踏まえて献立をたて、難しい場合はトッピング程度にとどめるのがよいでしょう。
その点、ペットフードは犬や猫など動物ごとに定められている栄養の基準をもとに作られており、栄養とカロリーがバランスよく配合されています。毎日あげるものこそ、ペットフードが最も望ましいのです。
持病がない犬や猫の場合は、"総合栄養食"という表記があるものを選びましょう。総合栄養食とは米国飼料検査官協会が定めているペットフードの栄養基準でもある AAFCO基準をもとにペットフード公正取引協議会が定めた基準に準拠したフードです。水道水とそのフードのみで必要な栄養をとれるというものです。
ペットにあげてもいい食材はある?
人間用としてスーパーで売っている食材も、ペットにあげることをおすすめする場合があります。
腎不全などで食欲が落ちている動物の場合は魚やささみ肉などを塩の入っていないお湯で茹で、その茹で汁をフードにかけて食欲を刺激し水分をよく取れるように工夫することがあります。
また、膵炎などで脂肪の多い食べ物を避けたいわんちゃんの場合は、炊いた白米を塩やしょうゆなどをつけずにおやつなどとして与えることもできます。
うさぎの場合はお野菜で水分を摂取することもできるので、キャベツや小松菜などを与えることをおすすめしています。
まとめ
大好きなペットに喜んで欲しいと思って与えたものが原因で調子を崩してしまったらとても悲しいですよね。人用に調理された食事のおすそ分けは控え、手作りごはんをあげる場合も栄養バランスやあげてはいけないものなどをしっかり確認するようにしましょう。
難しい場合は、水道水とフード中心の生活をするのが最も理想的です。
そのうえで、コミュニケーションのひとつとして人間の食べ物を与える時は、塩分が含まれておらず、中毒を起こさないものをおやつ程度に与える程度にとどめておきましょう。