【獣医師に聞く】冬の動物病院に寄せられる相談や症状は?

更新日 : 2021年01月08日

出典:PIXTA

直接的にせよ間接的にせよ、冬は寒さが原因となる病気が多くなります。

 

今回は冬に動物病院を訪れるきっかけとなる体調不良について、症状や対応策も含めてご説明します。

 

目次

 

冬はどんな病気や症状の来院が多い?

犬の場合

犬の冬の病気

 

犬のホルモンの病気に、甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能低下症があります。

 

ホルモンの病気が冬に発症しやすい、というわけではないのですが、これらの病気を患う犬は低体温症になりやすいので冬の過ごし方も工夫が必要です。甲状腺や副腎という臓器から作られるホルモンは糖の利用や熱産生に関わっており、これらのホルモンの分泌が少なくなってしまうことで低体温症になりやすくなってしまうのです。

 

特に副腎皮質機能亢進症はゆっくりと進行する上に、特徴的な分かりやすい症状があまり見られません。低体温症で意識を失った段階で初めて異変に気付き、飼い主が病院に駆け込んでくることも多いものです。

 

その他、人と同じように空気の乾燥などが原因で、冬には気管支炎など呼吸器の病気も発症しやすくなります。

 

また、冷えで循環が悪くなることなどから関節疾患の痛みなどが他の季節よりも多くみられることがあります。

 

猫の場合

猫の冬の病気

 

冬は猫のおしっこトラブルが増える時期です。

 

猫の祖先はリビアヤマネコという砂漠地帯に住む野生動物が起源とされ、貴重な水を効率的に利用できるよう腎臓が発達しています。体からおしっことして排泄する水分を減らすことができるよう、おしっこを濃縮する能力が高いのです。

 

その分、腎臓に負担がかかりやすくなっており、慢性腎臓病などの腎臓トラブルが多いと言われています。

 

冬は気温が低くなるので猫の飲水量が減り、おしっこはさらに濃縮される傾向があります。そのため、おしっこに含まれるミネラルが結晶化してしまい、その結晶が大きくなると結石になることもあります。また、結晶の塊が尿道に詰まっておしっこが出ない尿閉(にょうへい)という病気も多くなります。

 

中にはトイレの場所が廊下など寒いところにあるために行くのを嫌がって排尿回数が減り、膀胱に尿がたまっている時間が長くなることから膀胱炎や尿石症になってしまうこともあります。

 

おしっこは体に有害な物質を排出するためのものでもあり、二日近くおしっこが出ないと命の危険があります。おしっこが出ていない様子がある際は早急に受診しましょう。

 

その他、猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)などの基礎疾患がある場合、寒冷ストレスによって普段は抑えられている症状がでてくることもあります。くしゃみや鼻汁、目脂などが見られる場合や、動きが悪いなどいつもと違った様子がある場合には、早めに受診をするようにしましょう。

 

 

こんな症状は注意!受診の目安は?

世の中には様々な病気がありますが、まずは「いつもと比べて様子が変だな?」「見た目がいつもと違うかも」と思ったらその段階で受診することをおすすめします。

 

犬や猫は基本的には食べることが好きなので食欲や元気がない時は要注意で、その段階で状態が悪くなっていたり進行したりしている可能性があります。

 

 

寒い冬を健康に過ごす対策のポイント

気管支炎など呼吸器系のトラブルを防ぐためには保湿も欠かせません。ペットの体の届かないところに加湿器を設置するのも良いですし、加湿器がない場合は飼い主の入浴後に蒸気が立ち込めている脱衣所で数分程度過ごしてもらうのもおすすめです。

 

暖房は室温が25度を超えない程度に設定してあげるとよいでしょう。ただ、暖房の効いた部屋とそうでない部屋を犬や猫が自由に行き来できる環境であれば、人間が暖かく快適に感じる温度まで上げてもいいでしょう。

 

おしっこトラブルが増える猫には飲水量を増やす工夫も必要です。猫は動くものが好きな子が多いので、循環する給水器を使うのもいいかもしれません。そのほか、水飲み場を増やしてあげたり、ぬるま湯を飲むのが好きな子のためにお水とは別にぬるま湯を与えたりする方法も考えられます。

 

 

それはNG!寒さ対策でやってはいけないこと

間違った寒さ対策

 

猫や小型犬の中にはコタツで暖をとる子も多いようですが、長時間の使用は避け、低温やけどにも注意しましょう。暑くなると出ていくものなのですが、熟睡していると気がつかない可能性もあり、低温やけどを起こしてしまうことが考えられます。

 

コタツの中に入り込んでいるときは時間に注意し、コタツ机の上に乗っている場合は厚めのタオルなどを敷いて熱い部分が直接ペットの皮膚に触れないようにしてあげるとよいでしょう。

 

 

まとめ

冬は寒さが直接的な原因になって起きる病気や間接的に起こってしまう病気など、ペットの体調不良を招くさまざまなリスクが考えられます。ペットに変わった様子がないか注意しつつ、工夫して寒い冬を乗り越えましょう。

その他おすすめのコラム

初めて猫を飼う際の猫選びのポイントは? 

2020年04月01日

猫はほぼ野生のまま人と暮らしているといわれています。イエネコ(現在、人に飼われている猫)の祖先はリビアヤマネコと言われ両者の骨格、生態等を比べてみると大差ありません。猫が人と暮らし始めてからまだ5000年くらいとそんなに時間がたっていないのも、野性味が残... 続きを読む

飼う前に知っておきたい! 犬種別の特徴とその性格は?

2020年04月01日

犬にはとても多くの品種がありますね。それぞれ、大きさや外見だけでなく、気質が違うこともご存知でしょうか。犬は古くから、人間のために特定の役割を果たしながら改良されてきたので、犬種ごとの気質はその歴史と深く関連しています。 今回は多くある犬種の簡単な... 続きを読む

飼い主が病気になったときのペットとの接し方

2020年06月04日

  ペットは飼い主さんがお世話してあげないと生きていけません。手が掛かるというところも可愛いポイントの一つですよね。   しかし、いつ何が起きるかはわからないもの。飼い主さん自身が体調を崩してしまった時に誰にペットをお願いするか日頃から決めておくこ... 続きを読む

在宅が増えたことやアルコール除菌をする機会が増えたことで起こるペットトラブルとは?

2021年06月29日

動物病院ナビ&獣医師相談では会員様より毎日獣医師への相談を受け付けています。直近で寄せられた相談をピックアップしてご紹介します。今回は新型コロナ影響で在宅が増えたことやアルコール除菌する機会が増えたことによる相談です。  目次 相談1:久しぶ... 続きを読む